カクテルとは何か。
ものの本に出ている「酒+サムシング」という解答は、一見明快なようでいて、実態とはどうもあわないような気がしてなりません。
たとえば、世にあるたいていのカクテルブックにはノンアルコールの飲み物が掲載されているわけですが、著者も「ノンアルコール・カクテル」という言葉を使うし、読者も、よほどのことがない限りそれに違和感を覚えないでしょう。
ところが、同様に梅酒がカクテルとして掲載されている本があるかと言えば、これはもう九割九分、ないはずです。
梅酒の作り方を載せている本がないとは言いませんが、それとて梅酒をカクテルのひとつとしてとらえているのとは違うでしょう。
カクテルという言葉をごく狭い意味に、というのはつまりカクテルを「酒と何かを混ぜ、冷やし、カクテルグラスと呼ばれるグラスに入れて供するショート・ドリンクス」という意味に限定している本もなくはないですが、そんな本にもノンアルコールの飲み物は登場しますし、タイトルには堂々と「カクテル」の文字が使われています。
英語圏ではもう少し厳密な区別がなされていて、その際には総称として mixed drink(s) という言葉が使われるのがふつうのようですが(もちろん cocktail という語を使うこともあります)。
ともあれ、この講座では、まずカクテルという言葉を「(たいていは飲むそのときに)人がなんらかの手をかけてつくる飲み物一般」と定義します。
もう少し条件をきびしくしておけば、カクテルとは決してできあがるまでに何日もかかってはならない飲み物ですし、飲み手が知らない人が混ぜてもいけません。
だから、名前はどうあれ、工場でつくられる、あのできあいの酒は、ここで言うところのカクテルではない、と考えます。
では味噌汁はカクテルか、とまじめに問われてしまうと困るのですが、その気になってつくれば味噌汁は限りなくカクテルに近い飲み物であると言えます。
ふつうの味噌汁と味噌汁カクテルの差はなにか。
これは当面の宿題として、講座の最後にでもまた考えてみることにしましょう。
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