基本的には(セミ)プロ向けの一冊ですが、カクテルのことを本格的に知りたいという気持ちさえあれば読んでおいてまず損はないと思います。前半三分の一くらいを占める技術的な話は――個人的には「道」なんて大仰な言葉はごめんこうむりたいと思いましたが、これは立場の違いですから仕方ありません――バーテンダーになって日の浅い方はもちろん、アマチュアにとっても有益な情報が多いと感じました。氏の考え方については五年ほど前に同じ柴田書店から出たOYSYカクテルというムックでもかなり紹介されていたのですが、この本ではステアやシェイクだけでなく、ビルドなどについても氏のこだわりが表明されていて、参考になります。なによりステアの温度変化表を見て感動するのはぼくだけではないでしょう。
後半三分の二には氏のレシピが都合61、カクテルの紹介文というよりは氏がどういうところにこだわってつくっているかを中心にまとめてあります。スタンダードが半分、オリジナルが半分ですが、前半で説明されたことの実践編と思えばスタンダードもオリジナルも関係ありますまい。飲み専門の方でも、こういうところにこだわりがあるのだなとわかれば、これからはオーダーのあと、じっくりバーテンダー氏の手元を見るようになるかもしれない――お連れさんと話ばかりして手元を見ないだなんて、もったいないことなんですよ!――そんなことまで思わせられました。
客観的に見れば、久しぶりの名著だと思います。
ただし、プロの方には言うまでもないことでしょうが、これはあくまでも氏個人の考え方であって、絶対視する必要はまったくないということだけはお忘れなきよう。氏の業績を参考にするのはよいことですが、確固たる背景もなしに鵜呑みにしたってはじまりません。
最後にモノを言うのは自分なりのこだわりなのですからね。