Charlie's Cocktail BAR

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ベリーニ / Bellini

できれば背の高い(シャンパン用などの)グラスによく冷やしたスパークリング・ワインを注ぎ、必要ならあらかじめシュガーシロップを補ったピーチジュース(ピュレ/ネクター)を注ぐ。

氷も、余計な飾りも必要ありません。

ベリーニ。イタリア・ルネサンス時代のヴェネツィアに生まれて大きな影響を残した画家で、一連の聖母(子)画が代表作。その父兄もそれぞれ美術にかかわりを持っていたそうですが、ともあれ考案者のジュゼッペ・チプリアーノ氏が再現したいと願ったのがジョヴァンニ・ベリーニの描いたピンク色であるとか。

実験を終えたあと、そのチプリアーノ氏の息子氏が書いた『ハリーズ・バー』という本を再読して、氏のものとは異なるレシピを載せることにいささかのためらいを覚えないわけではなかったのですが、「ラズベリー・シロップ」を入れていないだけマシかと思い直して公開します。

山さん、リクエストどうもありがとうございました。

さて。

ベリーニのこだわりどころは、第一に桃をどうするか。ピンク色を出さなければならないという制約上、黄桃を使うという選択肢は最初からないものとしますが、それでも、生の白桃/缶詰の桃を(1)つぶして、漉し、果汁のみにする、(2)ミキサーなどで果肉ごと崩してしまう、市販の(3)さらさらした果汁系のジュースを買う、(4)どろりとしたネクター系のジュースを買う、くらいの選択肢が考えつきます。

生の白桃を使えるのであればベストは(1)。皮をむいて、種をとった生の白桃を、必要なら少し刻んで、ハンドプレス式のジューサーに入れてプレスするなり、さらしや布巾にくるんで搾るなり、あるいは和洋問わず裏漉し器にかけるなりしてジュースをとってください。ステンレスのザルを裏漉し器代わりに使うくらいの機転は大歓迎ですし、面倒なら、いささか淡白になりますが(3)の果汁100%ジュースを買ってもよいでしょう。

福西英三氏の『超カクテル講座』にも出てくる(2)の選択肢は、少なくともウチの安物ブレンダー/ミキサー+生の白桃では食感のありすぎるものしかできませんでしたし、その食感を減らそうと思うと結局薄めるか、漉すしかないので、おすすめしません。どうしても生の白桃が出回っていない季節につくりたいのであれば、(1)の代替案として缶詰の桃をブレンダーにかけて崩したものを漉すのも仕方ないかとは思いましたが、どちらにしても缶詰を使うのであれば、最近は桃のジュースにもよいものが出てきているのですから、(4)のネクター系ジュースを買った方が賢明でしょう。

スパークリング・ワインについては、ハリーズ・バーのあるイタリア・ヴェネト州産の新鮮な辛口プロセッコを使えるのであればそれを使うにこしたことはないのでしょうけれど、そんな流通量の少ないものは信頼のおけるプロのお店に行ったときに飲ませてもらうことにして、もっと手に入りやすいものを使ってください。

フランス産のシャンパンを使うにせよ、スペイン産のカバを使うにせよ、ジュース/ピュレ/ネクターが、それなりに濃ければ2対1、さらさらした感じがするのであれば1対1くらいで混ぜるのが一番と思います。ポイントはとにかくケチらないこと。桃があまり熟していなかったり、あるいはジュースの量が少なかったりすると薄っぺらさや苦味を感じることがありますので、透明感がなくなるくらい、少しとろみを感じるくらいにつくるのが吉です(ネクターが濃すぎる場合を例外として、自分以外の人に出すときはあらかじめ桃ジュースにシロップを補っておいた方が失敗はないです)。

また、特にピュレやネクターは重いので、よく混ぜるのも大切。きちんと混じっていないときにもえぐ味が出ます。(3)以外のジュース/ピュレ/ネクターを使うときには、ジュースを注いでからスパークリング・ワインを注ぐよりも、スパークリング・ワインを注いでからジュースを注いだ方が混じりやすいようです。

シャンパンを選ぶか、カバ(や、それに類するもの)を選ぶかはお好み次第。ハリーズ・バーの高級感を演出したいのであればシャンパンを選んだ方がよいでしょうし、フルーティさを前面に打ち出したいのであれば熟成感のないカバの方が無難なのですが……

実は、イタリア・ピエモンテ州産のアスティ・スプマンテと(1)のピュレを1対1であわせるという選択肢を捨てきれずに困っているのです。

同じスプマンテであっても、ヴェネトとピエモンテじゃ地理的にも、味的にも、イタリア北部の西の端と東の端くらい違うじゃないかと言う意見ももっともですし、あの隠しきれないマスカット風味とベリーニとは相容れないと言われてしまえばグウの音も出ないのですが――ご存知ない方のために書いておきますと、製法そのものについてはプロセッコもアスティも大差ないのですが、アスティの方には原料であるマスカット種特有の華やかな香りがありますし、ハリーズ・バーのレシピで期待されている辛口スプマンテとは違って、甘口なのです――なにせシロップのことなど気にしなくてもよいのですから簡単ですし、ベリーニといえばイタリア、という気持ちも満足しますし、少なくともウチでは一番好評だったのですから、ぼくの中では同率一位。

イタリアにはこだわりたいけれど、さすがにアスティじゃなあ、という方には、プロセッコと同じくヴェネト州産のソアーヴェをベースに使うことをおすすめします。こちらは無発泡性ですが、辛口ですし、供給量もアスティに次いでイタリア第三位ですから不足はありません。グラスにソアーヴェを注いで、どうしても泡が欲しければスプリッツァーよろしくソーダを加え、グラスの中に入っているのと等量か、少し多めくらいのジュース/ピュレ/ネクターを注ぐ。

『ハリーズ・バー』の巻末に載っているベリーニの作り方を読む限り無発泡性の白ワインでもOKのようですし、もともとプロセッコの泡はシャンパンのような瓶内二次発酵によるものではなくタンク式なので粗めですから、さほど異なる印象のものにはならないはず。

最後、色について。日本のレシピには往々にしてグレナディン・シロップを少々加えるとありますが、チプリアーノ氏は発色のためにラズベリー・ジュースを加えた(レディメイドの)ベリーニを「とんでもない飲み物だ。父が考案したすばらしいカクテルを侮辱してしまった」(安西水丸訳)と評しています。ぼくはそこまで強い気持ちを持っているわけではありませんけれど、ジョヴァンニ・ベリーニが聖母画を描いて五百年、ジュゼッペ氏が見たベリーニのピンク色って、本当にグレナディンが似合うような色なのかなあ。

桃の甘さが足りなかったら無色透明のシロップを補ってください。ぼくは、色を足さない方が素敵だと思いますよ。

参考資料

Permalink | 2005/08/15 08:59


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