氷を詰めたミキシンググラスによく冷やしたジンとベルモットを入れ、ステア。
好みに応じてオリーブやレモンピールを飾る。
オリーブは、洗って使うと少し辛口に感じられます。
マティーニ。
その一言だけですべてが言い尽くされてしまうようなカクテルに、いまさら何をつけ加えればよいでしょう。
マティーニこそは、思い入れを楽しむカクテルの王者です。他人になんと言われようとも、自分だけのマティーニが見つかったらしあわせなものですよ。
後れ馳せながらWa!さんのリクエストを受けてTips!に加筆しました。ありがとうございます。
さて。
これはどのカクテルにも言える注意ですが、特にドライ・マティーニをつくるときはジンを冷凍庫でよく冷やしておくこと(ちなみにベルモットは凍るので冷蔵庫です)。この冷やし具合だけで味の半分以上が決まるといっても過言ではありません。
素人がつくる分には冷やしすぎるくらいでちょうどよいでしょう。どうせ技術も冷凍庫もプロにはかないませんので。
ベルモットは、できれば新鮮なものを、マティーニがただのジンにならない程度に入れてください。
こだわりたい方は、ジンとベルモットの比率より、ジンとベルモットのブランドにこだわりましょう。ひとくちにジンと言っても、いろいろな味・香りがあるものです。よく人の話題にのぼるベルモットの多寡なんて、ベースにするジンが決まってからの問題ですよ。
質問があったので蛇足を付け加えれば、こと「マティーニ」については、ぼくのレシピは日によって違います。劣化の早いベルモットこそ一本しか置いていませんが、それも何ヶ月かごとには銘柄が入れ替わっていますし、ジンやウオッカはそれこそ何種類も常備していますから、選ぶ組み合わせからしてその日の気分と状況次第。比率も、ドライなのを飲みたい気分なのか、やや甘に仕上げたい気分なのかで、きっちり変えますし、処方そのものだって、まじめにステアするときと、オン・ザ・ロックスで適当にやるときとで違います。
統計的にはビフィーター+チンザノを上記の比率くらいにするのを好んでいるようですが、ゴードン+ノイリー・プラットも嫌いではないですし、極辛口にするブードルズ・マティーニもなるほどと思います。プリマス・ジンやブラック・デスというウオッカで少し甘めにつくるのもこれまたひとつの味だと思っていますし、ズブロッカ・マティーニというか、1対1くらいでまとめたズブロッカ・アンド・フレンチなんていうのも乙なもの。
外で飲むときは――「自分でつくるのが面倒だから」という理由で馴染みのバーテンダー氏の手をわずらわせに行くような日は別ですが――その日、そのお店の、そのバーテンダー氏が売りにしているマティーニを楽しみたいので、たずねられない限り自分の好みは伝えませんし、伝えるにしても、ごくおおづかみなことしか言いません。
「マティーニ」だけは、どんなものが出てくるか、その日一番のカクテルになれるかどうか、ドキドキしていたいですからね。
ぼくの「マティーニ」のこだわりは、レシピにはありません。その日、その時、ぼくが一番飲みたいのは、どんなレシピなのだろうと真剣に悩むこと/真剣に悩んでもらうこと。そして、その成果を、どうやって飲むか、どう感謝をあらわすか、考えて、実行すること。
言い換えれば、その瞬間の自分にとって完璧な一杯を演出するために最大限の努力をすること、それがぼくの「マティーニ」に対するこだわり、思い入れです。
他のカクテルだって同じじゃないかと言われるかもしれません。
でもね、やっぱり「マティーニ」についてだけは、ぼくも、バーテンダー氏も、その気合いの入り方が違うのですよ(笑)
だって、マティーニは「カクテルの王様」でなければならないのですもの。
マティーニのキーワードは、冷たさでも、強さでもありません。「完璧」に対するこだわり、ナンバーワン、オンリーワンを目指す気概です。
長い人生、失敗することだってあるでしょう。それはよいのですよ。また次をがんばれば。
でも、いつかはこの「完璧」を極めたい。もうほかには何もいらないと言ってみたい。
だからこその比率論争だったのであり、1950年代から綿々と続く、伝統的なマティーニのレシピを逸脱した「マティーニ」なのです。
いろんな考え方がありますもの、見栄で一本槍を気取ったっていいですよ。でも、本当にその一杯はみなさんにとっての「完璧」になっていますか?
なんて書くから「マティーニ伝説」が続いていくのでしょうね(笑)