ある夏の日の夕方のこと、自転車で環七を走っていたぼくの隣を、銀色に輝くサイドカーを従えたバイクが駆け抜けていきました。実際に走っているのを見たのはそのときが初めてだったのですが、そのあまりの視線の低さにスポーツカーを連想したこと、バスやトラックの隣を走るのよりも緊張したことを覚えています。
まあ、一説によれば、これは第一次世界大戦当時、サイドカーの乗り心地に肝を冷やした将校に贈られた「気付けの一杯」だったそうですから、怖い思いをするのは周囲だけではないんでしょうが(^^;)
ともあれ、実験まで済ませていたのに原稿を起こしていなかったぼくの尻を叩いてくださったがじさん、ありがとうございます。
さて。
もちろん好みの問題もあるのでしょうが、サイドカーをおいしくつくる一番のポイントは酸味を抑えることのように思います。ここでは基本のレシピに近い甘めのレシピを載せてありますが、4:1:1くらいでつくるドライなサイドカー(最初の一杯にするならこちらの方がよいでしょうね)の場合でもレモンジュースを心持ち減らした方がまとめやすいですし、時間がたって薄まったシロップ抜きアイスレモンティーを飲んでいるときのような落ちつかなさを味わわずにすみます。
もちろん実験で使ったコアントローよりも甘いホワイト・キュラソーを使う場合や、カミュのVSOP(赤ラベル)よりも甘くコシの強いブランデーを使う場合は、たとえば2:1:1のようなレシピでもよいと思いますが、ブランデーは、ジンやウオッカのようなホワイト・スピリッツに比べて樽熟成という過程を経て味が落ち着いている分(少し意地悪なことを言えばブランデーは樽やカラメルという甘味料が加わっている分)、きりっとした味を目指すよりも、甘く、やわらかい味に仕上げた方が無理がありません。
酸味をやわらげるという意味ではレモンジュースのかわりにオレンジジュースを使うというのもアイデアだと思いますが、これはロールス・ロイスというカクテルに変わりますし、そこまでするのならホワイト・キュラソーもオレンジ・キュラソーに変えてオリンピックにした方が素直かもしれません。