集英社新書から「マティーニを探偵する」という本が出ているのを見つけて、ちょっちブルー。プレイボーイ日本語版に連載されていたものをまとめたものだそうなのですが、すでに読まれた方はご存知の通りなかなかの好著です。というか、自分が翻訳家で、著者氏が本文中で取り上げているいくつかのタネ本を訳そうとして(あるいは訳し終えて出版社に持ち込もうとして)あがいているのでなければ雀躍りしていたであろう出来――なんですが、こういうのを見ると、翻訳家ってつくづく因果な商売だよなあと思ってしまいます(^^;)
ま、そんなことでいちいちメゲていては翻訳家、それも酒メインの翻訳家なんてつとまらんので、今日も今日とてジェリー・トーマス教授のカクテル本を発注してみたりしています。
ほかにも未公開ネタはそれなりにありますので、もし出版社にお勤めの方で興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたらお気軽にお声をかけてくださいませ。
さて、愚痴っぽい話はここまでにして、またどなたかからかわかりませんが「はばかり」ネタをひとついただきました。どうしようかと思ったのですが、ファイル整理をする気力が出ないのでとりあえずここでお返事しておきますと――
薬草系のリキュールはもとより、ジンやウイスキーなど、独特の香りのある洋酒が飲めないとのことですが、本当にこれらをおいしく飲めるようになりたいのであれば方法はただひとつ、ご自身の食生活を変えるしかありません。
いや、ジンやウイスキーに限らず、ワインでも日本酒でもビールでもそうです。そもそも体質的にアルコールを受け付けないというのであれば話は別ですが、他のお酒は飲めるのにどうしてかそのお酒だけは飲めない、苦手だという方は、それを許容できる舌をお持ちでないから、それを許容できる文化を受け入れていないからです。
ハンバーガーやカップラーメン、ポテトチップスなどを常食にしていませんか? ジンジャーエールやコカコーラ、あるいは日本やアメリカの薄っぺらいビールばかり飲んでいませんか? ニンジンやシイタケ、ピーマンが苦手だったりしませんか? 酢の物は、塩辛は、納豆は、食べられますか?
いまの日本の食は、「希薄」あるいは「単調」がひとつのキーワードになっています。ほんの十年、二十年前と比べてさえ、素材の味や香りは明らかに希薄になっていますし、そんな希薄な素材をそのまま食べてもおいしくないからと、濃い味付けをしては、その(化学)調味料の味一色に染め上げてしまっています。
問題意識の高い完全自炊派や、質のよい高級料理店に日参しているような方は別としても、いま、日頃の食事を外食(や、それと同等の中食)に頼っているみなさんが化学調味料を口にしないことなどまずありますまい。肉でも魚でも野菜でも、その多くは季節を無視し、自然を無視した、半工業製品としか言いようのない代物です。そんな画一的で幅の狭い食材に慣れきってしまった舌や鼻が、いきなりそれまで触れたこともないような強い香りを持つお酒を飲もうとしたって、「これは濃すぎる」と拒絶反応を起こして当たり前ですし、たとえやせ我慢をして飲み続けたところで、それが生活の中に定着することはまずありません。いっときの熱が冷めてしまえば見向きもしなくなるのが普通です。
まあ、だからこそ淡麗辛口のお酒がもてはやされてしまうわけなんですが。
ジンの国、ウイスキーの国、あるいはアニスの国でもミントの国でもワインの国でもかまいませんが、そういったものを飲み食いしている国の人たちの食事を見て、飲み物を見て、「こういう食事、こういうお酒、こういう生活もあるのか」と興味を持って受け入れてみてくださいませ。食事だけ、お酒だけでなく、全部ひっくるめてつきあってみてくださいませ。
確かに最初は戸惑うかもしれませんけれど、早ければ一月もしないうちに自分の体臭が変わってきたことに気がつくでしょうし、苦手だったはずの香草の匂い、食べたことのなかった肉や魚や野菜の匂いに違和感を感じなくなってきます。そうして身体がその国の匂いに慣れたところでもう一度飲めなかったはずのお酒を飲めば、「なんだ、そんなことだったのか」と思っていただけるはずですよ。
ただ、念のため書いておきますけれど、もちろんジンやウイスキーなんて飲めなくってもかまわないんですよ(^^;) 自分はこてこての日本人なんだから、日本酒と焼酎、あとはせいぜいあの薄っぺらなビールがあればいいと、言ったからとて誰に非難されることもありません。
たまたまぼくは飲み食いに強い関心を持っていますし、自分でもいろいろな国の料理をつくって食べてきましたから、日本酒からワインから、世界のビールにスピリッツにリキュール(のストレート)にカクテルにと、ほとんどなんでも楽しく飲めますが、裏を返せばぼくは日本酒ともワインともビールとも以下略とも、人より深い付き合いはできていない、浮き草のような存在かもしれないわけで、別に自分を卑下するつもりはありませんけれど、善し悪しだなあとは思いますから(^^;)
ま、最終的には習うより慣れろなんですが、一日一度のお酒で慣れるより、一日三度の食事で慣れた方が早いってこと。ジンやウイスキーといっても幅が広いですから、日頃飲んでいるお酒に近い味のするジンやウイスキーから順に鼻や舌を慣らしていくという手もあるんですけれどね、どうせだったらお酒にまつわる文化までいっしょに取り込んで咀嚼した方が世界が広がって楽しいんじゃないかな、と。
最後、こんな下の方になっちゃって申し訳ないんですが、がじさんへ。うちのURLはどこに書いてくださっても結構ですし、お断りにも書いてある通りそれについての連絡は無用ですが、余所様の掲示板に書くならその掲示板のルールだけは守ってくださいませ。知っている方に紹介するためということであればまず問題にはならないでしょうが、宣伝くん不許可という板も結構あるものですからね(^^;)
あと、伝言板の内容は、よほどの私信か、お返事に困るものでもない限り、たいていはここか、はばかりかで内容を公開してますよ(^^;) ただ、自分の書いたものを手元に残しておきたいというのはぼく自身も他人様の掲示板や伝言板に書いたときに思うことなので、それについては善後策を検討してみます。
「マティーニを探偵する」
香りの強い洋酒を美味しく飲む法
余所様の掲示板に……
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