宝石のサファイアの青色をしたカクテルを飲みたいというりぶらさんへ。「濃い藍色というかスカイウォッカのラベルの色というか……どうもあの深い青で、しかもカクテルとしてちゃんとおいしい、というものに出会えません。色にこだわると飲みにくくなり、味を重視すると、サファイアでなく、ライトブルーになってしまう」とのことですが、これは、少なくともごく基本的なレシピでよければ、そう難しいものではないと思いますよ。
たとえば、ウオッカないしラム(ジンでも可)を4、ブルー・キュラソーを1〜2、パルフェ・タムールを1〜2、レモンジュースを1というレシピ。一口にパルフェ・タムールと言っても赤紫が強いものもあれば青紫が強いものもありますし(カクテルに強いバーならその辺しっかり使い分けてくれます)、甘さの具合もそれぞれ違いますから微調整の必要はありますが、もともとがブルー・ムーンのバリエーションとでも言うべきものですからそう嫌われることはないでしょう。
これだとパルフェ・タムールのバニラ香がきつく出すぎるようなら、フランジェリコや、おすすめ度は少し下がりますがノチェロといったナッツ系のリキュールを少量加えるとまた雰囲気が変わってよいですし(こちらは2001/10/26付けのこの欄で紹介したアルディラのバリエーションと言ってよいでしょう)、レモンジュースの酸味だと少し強すぎるとのことであれば、より酸味が穏やかで色味の落ち着いたパイナップルジュースやグレープフルーツジュースで置き換えてもおもしろいかもしれません。
りぶらさんが飲まれた例でいうと、ブルー・マンデー+グレナディンの方は試しませんでしたが、「ジンにブルーキュラソーを加え、ブラックサンブーカを足して色味を濃く」したものなら、ピーチ・リキュールを少量加えると突出したハーブ香が隠れてうんとおいしくなりますね。
で、もう一方の、「このような、スタンダードにはなさそうな色のカクテルの注文というのはお店の人にどういう印象を与えるのでしょう?」という質問ですが。
こういうのは本当に人それぞれなので一般論を書いても始まらないのですが、「よく知らない方からの特別注文は良くも悪くも緊張する」ということだけは言えると思います。
たとえば、常連といえるくらいにまで通い詰めた店で「たまにはこんなのつくってよ」と言うのはよいのです。作り手の方も飲み手のクセやら何やら承知していますから、『まだこの方に出したことのない組み合わせで、好きそうなもの。かつ材料が手元にあって、今日はこういう系統のお酒を飲まれているから……』というところから組み立てていけるのですから選択肢もある程度絞り込めますし、お互い気心が知れていますから、仮にできないと断ったからとて「やっぱり無理か、あっはっは」でおしまいですから。
ところが、ほとんど一見に近いお客さんの場合、特殊な注文をしてくるということは――特定の誰かがつくってくれたあの味をもう一度飲みたいと思っているとか、特殊な何かにこだわった一杯を飲みたがっているとか、あるいは作り手の品定めをしようとしているのかもしれませんが――その段階でよほどの事情があると見受けられるわけです。
そういう方は、とにかく「何か」にこだわっていますから、その「何か」から少しでも外れたものを出すと、ひどく失望されるのですが、そのくせ、往々にしてその「何か」の正体はわかっていないのですから、始末に負えません。作り手の側も「何かお好きなお酒は?」「強いのは、甘いのは平気ですか?」「こういうのを作ろうかと思っているのですが、どうです?」等々、飲み手の反応を確かめながらレシピを組み立てていくのですが、ある程度の情報を集めたあとは、もう人生経験と山勘を頼りに、「これなら少なくとも文句は言われまい」というのを売るしかないわけです。
それを「ここが腕の見せ所」と思うか、「素直にメニューに載せてあるものを飲んでくれよ」と思うかはそのバーテンダー氏の気質と特別注文の特別さ次第でしょうが。
教科書的な答えをするなら、そういう場面で「面倒だ」と思ってしまう人のお店は――善し悪しはともかくとして――流行らないことになっています(笑)
ただ、バーテンダーとて人の子、たとえばほとんど初対面の方から「自分にあったカクテルを」なんて頼まれて、「そんなん知るか!」と言いたくなることって、あるんじゃないかと思いますよ(^^;)
「マスターのおすすめは?」(嫌いな酒なんざ置いとらん!)
「何かおいしいのください」(うちの酒がまずいとでも言いたいのか?)
「なんでもいいからジャンジャン持ってこい」(いい度胸だ、後でほえ面かくなよ)
「マスターも飲めよ」(俺を酔わせてどうしようってんだ?)
もちろん客商売ですから顔になんて出さないでしょうけれどね、「旅の恥はかきすて」みたいな感覚で、「どうせ二度と来ない店だから」という雰囲気ありありのままワガママな注文をしていると、まあ、手抜きくらいはされても文句は言えますまい。
りぶらさんの場合は心配いらなさそうですが、一般論を言うなら、特別な注文をするときには、どうしてそういう注文をするに至ったかとか、具体的にどういうお酒を使って、どんな感じに仕上げてほしいかとか、伝えられる範囲で伝える努力はしてほしいなあと思いますね。プロの著作の中にもちょいちょい出てくる話なのですが、結局のところ、知らない人のために特別なカクテルをつくることなんてできないのですから。
もうひとつ。どなたかわかりませんが「ドランブイって何ですか。」と伝言を残してくださった方へ。ドランブイというのはスコッチ・ウイスキーをベースに蜂蜜やら何やらを配合したリキュールの一銘柄のことです。これからの時期、ウチでもっとも活躍するリキュールのひとつでもあります。まあ、機会があったら飲んでみてくださいませ。
サファイア色のカクテル
特殊な注文は面倒がられる?
ドランブイ
バーテンダー職の探し方
モヒート
カミカゼ
大分合同新聞ウィークリー版
『五本で〜』本続報
レゲエ・パンチの名前の由来
ホワイト・ラムとダーク・ラム
ノンアルコールのジンジャービア
カスク・ストレンクス
スカーレット・オハラ
本棚に二冊追加
『五本で〜』を本にします